菅義偉首相の海洋放出に反対する理由

① 2013年、安倍首相は「汚染源に水を『近づけない』」という止水方針を掲げました。ところが、菅首相は、止水は将来の課題であるとの認識を明らかにし、現在たまっている汚染水のみならず、今後とも新規汚染水発生を継続させ、全て海洋放出させる方針に転じました。なお、東京電力の担当責任者は、建屋外壁部の完全止水は可能であり、汚染水を増やさない循環冷却ループはできるということを公の場で認めています。

② 菅首相は、現在の国の規制基準は魚等の「ヒト」以外の生物や植物も対象としているという趣旨のことを方針の中に掲げていますが、これは誤りであり、菅首相の認識が誤っているか、国民にあえて誤解を与えようとしているものです。

  実際には、現在の放射線防護の国の規制基準は「ヒト」のみを対象としています。原子力規制委員会・原子力規制庁もそのことを認めています。

現在の規制基準においては、人を防護の対象としております。 (2021年5月21日原子力規制委員会原子力規制庁長官官房放射線防護グループ放射線防護企画課回答)

  「ヒト以外の生物種」を対象とした環境防護の規制基準について、ICRP(国際放射線防護委員会)のクレア・カズンズ主委員長は、『2029年に「ヒト以外の生物種」の環境防護規制基準等の主勧告を公表する』と2020年11月20日のIAEAの国際会議で表明しており、IAEAのホームページで確認することができます。

  実際、ICRPは2007年主勧告において、ヒトに対する防護基準によってヒト以外の生物種は危険にさらされないと考えているとしてしました。しかし、原子力規制委員会のホームページに掲載されている『放射線防護に係る国際動向(報告)』(別途添付)等によれば2021年5月にPub.148を発表するなど環境防護に関する勧告を7つ発表し続け、「ヒト以外の生物種」を対象とした環境防護に関する評価ツールが全て出揃ったことから、ICRP内のタスクグループで環境防護の議論を本格化させ、2023年にはタスクグループでの取りまとめを発表し、2029年に環境防護を含む新しいICRP主勧告公表に向けて作業する方針に転換しています。

③ 菅首相の2023年海洋放出方針には「公衆や周辺環境の安全を確保するため、海洋放出は、東京電力がICRPの勧告に沿って定められている規制基準を厳格に遵守するとの前提の下、国際慣行に沿った形で実施することとする」と記されていますが、これは従来のヒトを防護の対象とした現在の規制基準のことであり、行政上、2029年以降のICRP新主勧告に基づいて我が国の「ヒト以外の生物種を対象とした環境防護の新規制基準」が策定されるまでの間、法的根拠に基づかずに不祥事だらけの東京電力に対し「ヒト以外の生物種を対象とした環境防護(環境保全)」の権限を総理大臣権限で与えたことを意味します。

④ 現在の「ヒトを防護対象とする規制基準」について、UNSCEAR、IAEA、ICRP等の国際機関は、広島・長崎の原爆被害者のデータを基礎にしていることは、専門家の間では周知の事実です。現在の「ヒトを防護対象とする規制基準」の基礎となった日本のデータを信頼している各国際機関の専門家は、現在進行形のICRPの「ヒト以外の生物種」を対象とする環境防護の国際基準づくりに福島第一原発の海洋放出のデータを活用するために東京電力を中心とした海洋放出チームに協力する約束をした(政府関係者)と言われており、政府も実際に国際協力を得ることを海洋放出方針の中で認めています。
 これらは福島を中心とした日本周辺海域でのヒト以外の生物種の被害状況を実験台に使用する試みであり、今回明らかになった菅首相の「新規汚染水発生を継続させ、全て海洋放出させる方針」には、強く反対します。

  ⑤ 福島第一原子力発電所の敷地面積は約350万㎡(東京ドーム70個分)です。
現在、処理水タンクエリア約30万㎡と凍土壁内・ALPS 施設約 15万㎡前後等を含めても、全敷地面積の約13%しか利用されていません。なによりも現状のタンクエリア内で収めるよう、止水工事の早期実施による新規汚染水発生防止(今よりもタンクを増やさないこと)が重要です。

  なお、半減期約12年のトリチウムは12年間の保管で1/2、24年間の保管で1/4に減少することから、より漏えい対策を強化したタンクや貯水槽等による長期保管を実施することで、その間にトリチウム分離技術の実用化等を進めることができ、たとえ将来的に海洋放出することになった場合でも風評被害の大幅な軽減を図ることができます。

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